社会人とは、苦しみの中に生きることと見つけたり。

 

 

 

_......

 

___......

 

 

_____...♪!

 

 

 

_______......♪♪♪!!!!!

 

 

...目覚ましがうるさい。

 

 

 

ほぼ反射のようにスマホのアラームを切り、画面を見る。

どうやら今は5時半らしい。

 

...朝はまだ寒いな

二度寝しよう...

 

 

 

 

 

___♪♪♪!!!

 

アラームを止める、時刻は5時40分。

また眠る。

 

 

 

___♪♪

アラームを止める、5時50分。

また眠る。

 

 

 

アラームが鳴る前に目が覚めた、今は5時56分。

朝は毎度二度寝を繰り返す、私は眠りに入るあの心地よさが好きなのだ。

”それ”を何度も味わうために、何度も眠りにつく。

 

ただ、まぁ...三回も繰り返せば、心地よさも薄くなる。

「今日はもう起きるか..」

 

 

 

そうなれば、次は布団の中でフォロワーに挨拶をする。

「クソ目覚め」

...いつもと同じ起き方だというのに

 

昨晩から今朝にかけてのツイートを適当に流し見る。

...今日は特に何もないな

いいイラストがあったので”いいね”をする。

この作者は好きだ、いつも良いイラストを描く。

 

 

 

そんなことをしていると、気づけば時計は6時半を指していた。

 

まずい。

 

6時58分の電車に乗るために、基本6時50分には家を出るようにしている。

この電車に乗り遅れると、余裕がなくなり、結構面倒なのだ。

 

寝癖を取り、歯を磨き、トイレを済ませ、スーツを着る。

朝食は食べない、正確には食べれない。

長年朝食を食べない生活をしていたせいか、朝は食べ物がのどを通る気がしないのだ。

所持品を確認し、時刻を確認する。

 

「6時48分」

 

どうやら大丈夫だ...危なかった

靴を履き、玄関を出る。

今日の夜から雨が降るらしいので、傘を持ち、駅までは歩きで行く。

自転車だと3分弱の道のりも、歩きだと時間がかかるものだ。

額に少しの汗をにじませ、足早に駅へと向かう。

 

「間に合った...」

 

無事に駅に着き、電車に乗る。

あいにく席は空いてないが、ここでは座れなくても良いのだ。

次の駅で一度降り、急行電車に乗り換える。

そっちで座れさえすれば良い、のだが...

 

 

...どうやらこちらも満席らしい。

 

「この駅で座れないと一時間たちっぱなんだけどな...」

仕方がない。

少し車内を見渡して、座っている私服の男性を見つける。

 

恐らくこの男性は終点駅までは行かないだろうと予想し、彼の前に立つ。

こいつが席を立った瞬間、私の安息が約束されるのだ。

 

ドアが閉まり、電車が動く。

動き始めはいつもよろける、何度経験しても慣れないものだ。

 

駅に着く、どうやら後ろの席が空いたようだ。

扉に立っていた女性が速攻座る、やられた.....

 

駅に着く、この駅は人が多い。

一気に社内の人口密度が高まり、冷房がはいる。

この冷房、座っているときは良いのだが、立ってるといかんせん風を直接受けるので、体が冷えすぎてしまう。とても寒い。

腹痛も来た、とてもつらいしとても寒い。

しかしここで降りたら次乗るときに苦労する...

 

腹痛、そして寒さと戦うことにした。

 

スマホは見れない、電車酔いしていまうからだ。

普通にしてる時でさえ気持ち悪くなる。そこでさらにスマホを見るために下を向くと、

まぁ一瞬で三半規管がぶっ飛ぶ。

スマホを見る余裕などないのだ。

 

少しでも気を紛らわせるために外の景色を見る。大きな民家の桜の木が、弱弱しくも美しい色で己を見せつけていた。

 

腹痛の波が治まってきた。

また乗客が増える、これ以上は乗れないな、と思っても乗ってくるし、意外と乗れる。

電車のキャパシティには常々驚かされる。

 

電車がゆっくりと停車する、ここは線路の真ん中だが、降りろと?

 

//ホームへの転落事故が...\\

 

どうやら先の駅でホームに転落してしまった者がいたらしい、迷惑な。

 

少し経つと、電車が動き出す。

解決したようだ。

 

しかし、そこからもちょこちょこ止まる。

どうやら件の転落事故で、全体のダイヤが乱れ、少しずつ調整しているらしい。

全く面倒なものだ。

__転落した者の心配などするわけもなく

 

 

どうやら次は終点らしい。

ここでもう一度乗り換え、職場に向かう。

私の前に座っていた男性は、変わらずそこにいた。

どうやら今日は外れたらしい、運がない。

 

//終点~...○○、○○です...\\

 

駅のホームは人でごった返していた。

まともに歩くことすらできない。

 

改札への階段の列らしきものがあったので、大人しくそこに並ぶことにした。

私の前に並んでいたハゲが列を抜け、少し前の方に割り込もうとしていた。

 

この列の密度じゃ無理だろ

 

そう思いながらスマホを見つめ列を進む。

もうそろそろか、と顔を上げ、列の先を見つめる。

あのハゲがエスカレーターにいた。

 

...この世は秩序に従った者ほど損をするらしい。

 

連絡通路を通り、別の電車へ向かう。

 

___また来た、腹痛だ。

しかしこの駅のトイレは基本並んでいる、入れるわけがない。

 

腹痛に耐えながら電車に乗り込み、二つ先の駅で降りる。

この駅は利用者が少ない、つまり、基本トイレは空いている。

...良かった、今日も相変わらず空いていた。

私はこの駅を”トイレ”と名付けている。

 

長らく貯めた爆弾を投下する。

”それ”は強烈な臭いを放ちながら、私の元を離れ、あるべき場所に還る。

 

___訪れる安息、この安堵感は何物にも代えがたい...

 

少しスマホをいじり、電車が到着する時間に合わせトイレを出る。

何事もなく駅に着く、始業までは10分ほどの余裕があった。

 

駅の自販機でお茶を買い、喉を潤す。

これがないと挨拶ができない。

 

会社に着いた、扉を開ける。

 

「...おはようございます」

 

お世辞にも良い声とは言えない小さくかすれた声で挨拶をする。

申し訳ございません...朝は苦手なんです...

 

上司から挨拶が返ってくる、ちゃんと届いたようだ、安心。

同僚にもほどほどに挨拶をし、始業に備える。

 

 

 

__~__~__~

 

チャイムが鳴る、始業の合図だ。

今はまだ研修期間なので、正直内容は楽だ。

ただ、なぁなぁでやってはいけない。

しっかりと身につける、それを意識して研修に取り組む。

 

気が付いたら、終業のチャイムが鳴っていた。

 

秒で帰る準備をし、挨拶もそこそこに帰宅する。

研修は気持ち一瞬ではあるが、溜まった疲れは一瞬の”それ”じゃない。

 

「さっさと帰って横になってスマホいじりたい」

 

その想いのエネルギーだけで体力の尽きた体を無理やり動かす。

 

 

 

...どうやら別路線の電車が運転見合わせしてるらしい。

普段の1.5倍ほどの人間がホームにいた。

「バカじゃねぇの」

 

流石に帰りの電車くらいは座りたいと思い、最前列で待てるタイミングを計る。

...結局、電車を二本見送り、無事に電車に座ることができた。

 

ここからはもう寝ればいいから楽だ、寝心地は悪いが。

 

 

 

眠り続け、最寄の駅まで着く。

外は予報通り、雨が降っていた。

 

改札を出て、傘を差す。

「...この雨だと、あの桜はさすがに全部散ったかな」

そんなことを考えながら、家路につく。

 

玄関の鍵を開け、靴を脱ぎ、手を洗い、スマホを開く。

液晶には21時と表示されていた。

 

 

 

...どうせ明日も早いのだ、今日もさっさと寝よう。

食事も風呂も済ませ、歯も磨き、部屋の電気を消す。

今日は疲れた、明日も疲れるのだろう。

 

 

 

研修は楽だが、楽しくはない。

同僚と特に仲が良いわけでもない。

旧友とは休日にしかゆっくり話せない。

 

 

 

 

 

「...何が楽しくて生きてんだろ」

 

 

___その答えを知るのが怖くて、逃げるように布団にもぐる。

”苦しみ”は、自覚するのが一番苦しい。

 

 

 

「おやすみ」

 

                               ~Fin~

ーED NO.3【救いのない日々】ー